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【創発的研究支援事業紹介】No. 4 神谷真子 教授

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2023.06.06

生命理工学院の教員が研究代表を務める研究課題が創発的研究支援事業に採択されました。創発的研究支援事業は、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究」を推進するため、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な多様な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ長期的に支援する文部科学省の事業です。

採択された教員をクローズアップしてご紹介するシリーズ記事(全7回)を連載いたします。全7回のうち、第4回目は“次世代型ラマンプローブの創製による生体機能多重解析”の研究課題の研究代表を務める神谷真子 教授です。

神谷真子 教授

神谷 真子 教授

居室 B1-901室
Tel/Fax 045-924-5786

-まず、神谷先生の研究テーマを聞かせて下さい。

私達の研究グループでは、生命現象を観たり操作したりするための独自の光機能性分子(蛍光プローブ、ラマンプローブなど)を創って、生命や病気の謎を解き明かすことを目標とした研究を行っています。創発的研究支援事業では、ラマンプローブの開発研究に取り組んでいます。ラマン顕微法は蛍光法と比べてスペクトル幅が狭いため、多重検出に秀でたイメージング手法として注目を集めていますが、ラマンイメージングに利用可能なラマンプローブの数は少なく、特に観測標的の生体分子との反応前後でラマン信号強度が変化するようなactivatable型ラマンプローブの報告は極めて限定的でした。このような背景の中、私たちの研究グループではこれまでに、吸収波長の長波長化に伴いラマン散乱信号が増大する効果(共鳴ラマン効果)に着目し、標的酵素との反応によりラマン信号が増大するactivatable型ラマンプローブを世界に先駆けて開発してきました。現在、このような機能性ラマンプローブの拡充に取り組んでおり、これらのラマンプローブを用いて、これまで同時に観測できなかった数の分子の機能や活性を同時検出・解析することができるようになれば、新たな生命現象の理解に貢献できると考えています。

-この研究を始めたきっかけを聞かせて下さい。

ラマンプローブの開発研究は4,5年程前から取り組んでいる研究プロジェクトで、それ以前は主に蛍光プローブの開発研究に取り組んでいました。蛍光イメージングは感度が高く、細胞を生きたまま観察できる非常に有用な手法ですが、同時に観察できる分子の数が限定されるという課題があります。一方で生体は多種多様な分子が相互作用して機能しているため、より多くの分子を同時に観察することができれば、生命現象の包括的な理解につながると考えられます。このような中、ある研究会で、高速・高感度なラマン顕微鏡を開発されていらっしゃる東京大学の小関泰之先生に声をかけていただいたことがきっかけとなり、ラマンプローブの開発研究がスタートしました。この研究は、私達がこれまでに取り組んできた蛍光プローブ設計の知見・技術を、ラマンイメージング領域に展開することを目指したものですが、単なる転用ではうまくいかず、かなりの試行錯誤が必要でした。当教室・助教の藤岡さん、河谷さんをはじめとした研究室のメンバーが主体的に取り組んでくれたお陰で、本プロジェクトを大きく前に進めることができました。

-今回の創発的研究支援事業で取り組まれる具体的な研究内容を
 聞かせて下さい。

今回採択いただいた創発的研究支援事業では、私達のこれまでの取り組みで得られたラマンプローブ開発に関する知見を最大限に活用することで、「次世代型ラマンプローブの創製とそれを用いた生体機能多重解析」の実現を目指していきます。具体的には、ラマンイメージングの多重検出能を活用しつつ、有機合成を基盤としたケミカルバイオロジー研究を展開することで、細胞内滞留性・感度・空間分解能・特異性を高めた次世代型ラマンプローブ群の創製に取り組みます。本研究課題の達成により、ラマンイメージングの性能を飛躍的に拡張するのみならず、多次元の情報を引き出しうるバイオイメージング法が提案できると考えています。

-今後の目標を聞かせて下さい。

私達はこれまでに、がんで亢進している酵素との反応によって蛍光を発するactivatable型蛍光プローブを用いたがん蛍光イメージング技術を開発してきましたが、同時検出できる酵素の種類を増やすことができれば、より精度の高いがんイメージングが行えると考えられます。従って、ラマン顕微法の高い多重検出能を活用し、複数の酵素を同時検出可能なラマンプローブ群を開発することで、高精度ながんイメージング技術の実現につながると期待しています。また、新しい原理に基づくラマンプローブの設計原理を確立することができれば、従来法では検出が難しかった生体分子を標的とした新規ラマンプローブ開発につながると考えられ、ラマンイメージング法の更なる発展を加速させることができると考えています。

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