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中村(信)研究室―研究室紹介 #8―

臓器や細胞の形や機能を維持調節する仕組みを解明する

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2016.10.27

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、臓器や細胞の形や機能を維持調節する仕組みを解明する、中村(信)研究室です。

准教授 中村信大

生命理工学コース
准教授 中村信大別窓

キーワード 分子生物学、細胞生物学、生体情報学
Webサイト 中村(信)研究室別窓

研究紹介

私たちの生命活動を支えている組織や細胞は、どのようにして形作られて維持されているのだろうか?

その答えを分子レベルで説明できるようにするため、私たちの研究室では受容体やチャネル分子などの細胞内情報伝達分子に注目して、個々の生命現象での役割について明らかにする研究を行っています。

多細胞生物の恒常性維持には、組織間および細胞間のコミュニケーション(情報伝達)が重要な役割をもちます。生体情報を細胞内に伝達する受容体やチャネル分子などの異常は、臓器不全や奇形、がん化などの様々な疾患を引き起こすことが多いため、創薬研究の主要なターゲットとして注目されています。しかしながら、どのような情報を受け取り、どのような細胞応答を引き起こすのか明らかにされている分子はごく一部に限られています。私達の研究室では、未だ詳細な機能解明がなされていない情報伝達分子に焦点を当てて、分子生物学、細胞生物学、発生生物学的な手法を組み合わせて以下のような研究を行っています。

(1)ノックアウトマウスを用いた肺の生体防御を担う受容体分子の機能解明

肺には呼吸を介して進入してきた病原菌などの異物を除去する生体防御システム(自然免疫)が備わっています。最近のノックアウトマウスの解析から、Gタンパク質共役型受容体の一つであるIg-Heptaがこの生体防御に深く関わっていることが明らかとなりました。Ig-Heptaの発信するシグナルとその作用機構を明らかにすることで、肺における免疫調節のしくみとその破綻による病態発症のメカニズムの理解につなげることを目指しています。

正常およびKOマウスの肺の切片像と病態発症のメカニズムの予想

(2)ゼブラフィッシュを用いた心筋細胞分化の仕組みの解明

ゼブラフィッシュの変異体(ftk)の解析から、心臓発生の初期に働く重要なチャネル様タンパク質(コネキシン)を同定しました。このコネキシン分子は心筋細胞の分化(筋原繊維の形成)に関連する遺伝子発現とそのシグナル伝達に関与することから、その詳細な分子メカニズムを明らかにすることで、心臓発生および心臓疾患、心臓再生のこれまでに知られていなかった仕組みが解明されることを期待しています。

正常およびftk変異体の心筋細胞の電子顕微鏡像ftkでは筋原繊維の向きが乱れている

図1. 正常およびftk変異体の心筋細胞の電子顕微鏡像ftkでは筋原繊維の向きが乱れている(*)。

(3)ミトコンドリアの形や機能をコントロールするユビキチン化の機能解析

ミトコンドリアは絶えず形や細胞内分布をダイナミックに変化させています。この形態変化はミトコンドリア機能(エネルギー産生、アポトーシスなど)と密接な関係があり、形態調節の異常が神経変性疾患の原因となることから、ミトコンドリア形態制御の分子機構の解明が待たれています。私たちは哺乳動物ミトコンドリアのユビキチン化制御分子(MARCH5とUSP30)を同定し、ユビキチン化がミトコンドリア形態・機能調節に働くことを見出しています。現在、これらの分子の作用機構の解析を進めています。

ユビキチン化がミトコンドリア形態・機能調節に働くことを見出しています

研究成果

代表論文

  • [1]  Miyagi H, Nag K, Sultana N, Munakata K, Hirose S & Nakamura N. (2016) Characterization of the zebrafish cx36.7 gene promoter: its regulation of cardiac-specific expression and skeletal muscle-specific repression. Gene 577, 265-274
  • [2] Ariestanti DM, Ando H, Hirose S & Nakamura N. (2015) Targeted disruption of Ig-Hepta/Gpr116 causes emphysema-like symptoms that are associated with alveolar macrophage activation. J. Biol. Chem. 290, 11032-11040
  • [3] Nakamura N, Harada K, Kato M & Hirose S. (2014) Ubiquitin-specific protease 19 regulates the stability of the E3 ubiquitin ligase MARCH6. Exp. Cell Res. 328, 207-216
  • [4] Fukuzawa T, Ishida J, Kato A, Ichinose T, Ariestanti DM, Takahashi T, Ito K, Abe J, Suzuki T, Wakana S, Fukamizu A, Nakamura N & Hirose S (2013) Lung surfactant levels are regulated by Ig-Hepta/GPR116 by monitoring surfactant protein D. PLOS One 8, e69451
  • [5] Zhao B, Ito K, Iyengar PV, Hirose S & Nakamura N. (2013) MARCH7 E3 ubiquitin ligase is highly expressed in developing spermatids of rats and its possible involvement in head and tail formation. Histochem. Cell Biol. 139, 447-460
  • [6] Han SO, Xiao K, Kim J, Wu JH, Wisler JW, Nakamura N, Freedman NJ & Shenoy SK.(2012) MARCH2 promotes endocytosis and lysosomal sorting of carvedilol-bound β2-adrenergic receptors. J. Cell Biol. 199, 817-830
  • [7] Iyengar PV, Hirota T, Hirose S & Nakamura N. (2011) Membrane-associated RING-CH 10 (MARCH10 protein) is a microtubule-associated E3 ubiquitin ligase of the spermatid flagella. J. Biol. Chem. 286, 39082-39090
  • [8] Saito K, Nakamura N, Ito Y, Hoshijima K, Esaki M, Zhao B & Hirose S. (2010) Identification of zebrafish FXYD11a protein that is highly expressed in ion-transporting epithelium of the gill and skin and its possible role in ion homeostasis. Front. Physiol. 1, 129
  • [9] Nakamura N & Hirose S. (2008) Regulation of mitochondrial morphology by USP30, a deubiquitinating enzyme present in the mitochondrial outer membrane. Mol. Biol. Cell 19, 1903-1911
  • [10] Nakamura N, Kimura Y, Tokuda M, Honda S & Hirose S. (2006) MARCH-V is a novel mitofusin 2- and Drp1-binding protein able to change mitochondrial morphology. EMBO Rep. 7, 1019-1022

教員紹介

中村 信大 准教授(理学博士)

2003年3月 東京工業大学大学院生命理工学研究科生体システム専攻 博士課程修了 博士(理学)
2000~2003年 日本学術振興会特別研究員
2003~2007年 東京工業大学大学院生命理工学研究科 分子生命科学専攻 助手
2007~2010年 東京工業大学大学院生命理工学研究科 分子生命科学専攻 助教
2010年より 現職
2013年10月 東工大挑戦的研究賞
所属学会
日本生化学会、日本細胞生物学会、The American Society for Biochemistry and Molecular Biology、The American Society for Cell Biology

教員からのメッセージ

中村信大准教授より

生命科学の勉強・研究をはじめると、自分の身体の中で起こっている現象の仕組みと意義について分かっていないことが数多く残されていることに驚くことでしょう。

様々な生物学上の未解決難問の解決に貢献できるように、私たちは日夜コツコツと努力を積み重ねて研究を行っています。

お問い合わせ先

准教授 中村信大
すずかけ台キャンパスB2棟 720号室
E-mail : nnakamur@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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