生命理工学系 News

田中(幹)研究室―研究室紹介 #1―

からだの形を進化させた発生プログラムを探る-形態進化を再現する-

  • RSS

2016.09.20

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、からだの形を進化させた発生プログラムを探り、形態進化の再現に挑む、田中(幹)研究室です。

准教授 田中幹子

生命理工学コース
准教授 田中幹子別窓

キーワード 進化発生学、形態学、器官形成
Webサイト 田中(幹)研究室別窓

研究紹介

脊椎動物の進化の過程で新しく獲得され、形態を変化させてきた器官には様々なものがあります。私達は、特に鰭や四肢をモデルにして、形態を進化させる発生プログラムの変遷に着目して研究をしています。このように発生様式に着目した動物進化の研究分野を「進化発生学」とよび、サメ、メダカ、カエル、ニワトリなど、様々な種類の動物胚を使った研究を展開しています(図1)。

図1 ニワトリ胚への遺伝子導入。(a)遺伝子導入をする機器。(b)ニワトリ胚の予定前肢芽領域へ、DNAを導入している様子。(c)肢芽にEGFP発現コンストラクトを導入されたニワトリ胚。

図1 ニワトリ胚への遺伝子導入。(a)遺伝子導入をする機器。(b)ニワトリ胚の予定前肢芽領域へ、DNAを導入している様子。(c)肢芽にEGFP発現コンストラクトを導入されたニワトリ胚。

1. 鰭の獲得と四肢への進化

私達の祖先の原始脊索動物はナメクジのような形をしており、対になった鰭は持っていませんでした。ナメクジのような形の体に鰭が獲得されたのは、なぜなのか?鰭が四肢へと進化してきたのはどうしてなのか?ナメクジウオ胚やサメ胚を使って研究をしています(図2、図3)。

図2 サメの胸鰭原基では前側領域 (Alx4, Pax9) が広く、マウスの前肢芽では後側領域 (Hand2) が広い(Onimaru et al., 2015)。

図2 サメの胸鰭原基では前側領域 (Alx4, Pax9) が広く、マウスの前肢芽では後側領域 (Hand2) が広い(Onimaru et al., 2015)。

図3 サメの胸鰭原基の後側領域を人為的に広くすると、Tiktaalik(上陸したばかりの両生類)の胸鰭のように根元の骨が1つになる。鰭から四肢への進化の過程では、鰭が後側化することが重要だったのだろう(Onimaru et al., 2015)。

図3 サメの胸鰭原基の後側領域を人為的に広くすると、Tiktaalik(上陸したばかりの両生類)の胸鰭のように根元の骨が1つになる。鰭から四肢への進化の過程では、鰭が後側化することが重要だったのだろう(Onimaru et al., 2015)。

2. 肢芽の形成される区画の設定

四肢動物の手足は、正しい位置に形成されるように制御されていて、首や脇腹から手足が生えてはきません。私達は、脊椎動物の体壁の正しい位置に手足が形成される区画が設定されるために、どのような発生プログラムが働いているのかを調べています。

3. 腹鰭形成位置の多様化

真骨魚類の腹鰭は、その形態を多様に変化させているだけでなく、その形成位置を進化に伴い前側に少しずつずらしているという興味深い特徴があります。

腹鰭の形成位置や形態の多様化は、巨大な真骨魚類グループの生活圏や行動も多様にしたと考えられます。そこで私達は、真骨魚類の腹鰭の形成位置や形態の多様化をもたらした発生プログラムの変化を明らかにしようと取り組んでいます。

4. 四肢形態の多様化

脊椎動物の四肢の形態は非常にバラエティーに富んでいます。

私達は、四肢の指間の細胞死メカニズムなど(図4)、四肢の形態を多様にした分子基盤を理解することを目的とした研究に取り組んでいます。

図4 ニワトリの肢芽の指間領域で発現するMafB遺伝子は、BMPタンパク(*印は BMP のアンタゴニスト)に制御されている (Suda et al., 2014)。

図4 ニワトリの肢芽の指間領域で発現するMafB遺伝子は、BMPタンパク(*印は BMP のアンタゴニスト)に制御されている (Suda et al., 2014)。

研究成果

代表論文

  • [1] Onimaru, K., Marcon, L., Musy, M., Tanaka, M., Sharpe, J. The fin to limb transition as the re-organisation of a Turing pattern. Nature Communications 7, Article number 11582 (2016)
  • [2] Tanaka, M. Fins into limbs: autopod acquisition and anterior elements reduction by modifying gene networks involving 5'Hox, Gli3 and Shh. Dev. Biol. 413, 1-7 (2016)
  • [3] Onimaru, K., Kuraku, S., Takagi, W., Hyodo, S., Sharpe, J., Tanaka, M. A shift in anterior-posterior positional information underlies the fin-to-limb evolution. eLife 4, e07048 (2015)
  • [4] Suda, N., Ito, T., Nakato, R., Shirakawa, D., Bando, M., Katou, Y.,Kataoka, K., Shirahige, K., Tickle, C., Tanaka, M.* Dimeric combinations of MafB, cFos, and cJun control the apoptosis-survival balance in limb patterning. Development 141, 2885-2894 (2014)
  • [5] Tanaka, M.* Acquisition of the paired fins: a view from the sequential evolution of the lateral plate mesoderm. Evol. Dev. 109, 8937-8942 (2012)
  • [6] Hosokawa, Y.*, Ochi, H., Iino, T., Hiraoka, A., Tanaka, M.* Photophoration of biomolecules into single cells in living vertebrate embryos induced by a femtosecond laser amplifier. PLoS ONE 6, e27677 (2011)
  • [7] Onimaru, K.*, Shoguchi, E., Kuratani, S., Tanaka, M.* Development and evolution of the lateral plate mesoderm: Comparative analysis of amphioxus and lamprey with implications for the acquisition of paired fins. Dev. Biol. 359, 124-136 (2011)
  • [8] Murakami, Y. *, Tanaka, M. * Evolution of motor innervation to fins and limbs. Dev. Biol. 355, 164-172 (2011).
  • [9] Tanaka, M.* Revealing the mechanisms of rostral shift of pelvic fins among teleost fishes. Evol. Dev. 13, 380-388 (2011)
  • [10] Murata, Y., Tamura, M., Aita, Y., Murakami, Y., Fujimura, K., Okabe, M., Okada, N., Tanaka, M.* Allometric growth of the trunk leads to the rostral shift of the pelvic fin in teleost fishes. Dev. Biol. 347, 236-245 (2010)
  • [11] Kokubo N., Matsuura, M., Onimaru, K., Ticke, E., Kuraku, S., Kuratani, S., Tanaka, M.* Mechanisms of heart development in the Japanese lamprey, Lethenteron japonicum. Evol. Dev. 12, 34-44 (2010)
  • [12] Sakamoto, K., Onimaru, K., Munakata, K., Suda, N., Tamura, M., Ochi, H., Tanaka, M.* Heterochronic shift in Hox-mediated activation of Sonic hedgehog leads to morphological changes during vertebrate fin evolution. PLoS ONE 4, e5121(2009)
  • [13] Matsuura, M., Nishihara, H., Onimaru, K., Kokubo, N., Kuraku, S., Kusakabe, R., Okada, N., Kuratani, S., Tanaka. M.* Identification of four Engrailed genes in the Japanese river lamprey, Lethenteron japonicum. Dev.Dyn. 237, 1581-1589 (2008)
  • [14] Tanaka, M., Hale, L. A., Amores, A., Yan, Y.-L., Cresko, W. A., Suzuki, T., Postlethwait, J. H. Developmental genetic basis for the evolution of pelvic fin loss in the pufferfish Takifugu rubripes. Dev.Biol. 281, 227-239 (2005)
  • [15] Tanaka, M.*, Tickle, C. Tbx18 and boundary formation in chick somite and wing development. Dev. Biol. 268, 470-480 (2004)
  • [16] Cole, N., Tanaka, M., Prescott, A. R., Tickle, C. Expression of limb initiation gene and clues to the basis of morphological diversification of three-spine sticklebacks. Curr. Biol. 13, R951-R952 (2003)
  • [17] Tanaka, M.*, Munsterberg, A., Anderson, W. G., Prescott, A. R., Hazon, N., Tickle, C. Fin development in a cartilaginous fish and the origin of vertebrate limbs. Nature 416, 527-531(2002) This paper is evaluated as one of ‘Must read” paper by Faculty of 1000.
  • [18] Schmidt, M., Tanaka, M., Munsterberg, A. Expression of β-catenin in the developing chick myotome is regulated by myogenic signals. Development 127, 4105-4113 (2000)
  • [19] Tanaka, M.*, Cohn, M. J., Ashby, P., Davey, M., Martin, P., Tickle, C. Distribution of polarizing activity and potential for limb formation in mouse and chick embryos and possible relationship to polydactyly. Development 127, 4011-4021 (2000)

主な日本語総説

  • [1] 田中 幹子「四肢の起源、形態進化のロジックを辿る?エボデボ研究最前線[動物篇]」生物の科学 遺伝 67, 170-177 (2013)
  • [2] 田中 幹子、鬼丸 洸「脊椎動物が体壁に対鰭を獲得するまでの長い道のり」特集:複合適応形質進化の遺伝子基盤 生物科学 63, 166-174 (2012)

主な著書

  • Tanaka, M. and Tickle, C. Fins/limbs in the study of development. In Fins to Limbs. Brian Hall, ed. University of Chicago Press, Chicago. pp65-78(2006)

教員紹介

田中幹子 准教授(理学博士)

1998年3月 東北大学大学院理学研究科生物学専攻博士課程修了
1998年4~7月 ロンドン大学Tickle研究室 学振特別研究員
1998年8月~2003年3月 ダンディー大学Tickle研究室 海外学振特別研究員等
2003年4月~2004年3月 オレゴン大学Postlethwait研究室 上原ポストドクトラルフェロー
2004年4月 東京工業大学大学院生命理工学研究科助教授
2007年4月より 現職
2010年 日本進化学会奨励賞
2006年 文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2006年 財団法人手島工業教育資金団 中村研究賞
2005年 日本動物学会奨励賞
2004年 東京工業大学挑戦的研究賞
1999年 井上研究奨励賞
所属学会
日本分子生物学会、日本発生生物学会(2007~8年 運営委員)、日本動物学会(2015年~現在 Associate Editor of Zoological Science, 2016年~現在 関東支部代表委員)、日本進化学会(2012~13年、2016年~現在 執行部役員、2016年~現在 評議員)

教員からのメッセージ

田中准教授より

田中研究室では、進化発生学や形態学に興味があり、意欲的な学生を歓迎致します。

お問い合わせ先

准教授 田中幹子
すずかけ台キャンパスB1棟 715号室
E-mail : mitanaka@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE