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本郷研究室―研究室紹介 #2―

共生の分子機構を解明する

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2016.09.29

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、共生の分子機構を解明する、本郷研究室です。

教授 本郷裕一

生命理工学コース
教授 本郷裕一別窓

キーワード 共生、昆虫、微生物、ゲノム解析
Webサイト 本郷研究室別窓

研究紹介

当研究室では、生物種間の共生機構の解明を目指しています。
また、培養できない微生物群集の生理・生態の解明に取り組んでいます。

細菌や原生生物(単細胞真核生物)などの微生物は、地球生態系の基盤をなすとともに、食品・医薬品などの産業にも欠かせない存在です。
しかし、人工培養可能な微生物種は1%以下であり、大多数の種の生理・生態は未知のままで、産業応用も困難です。
そうした培養できない微生物の研究には、分子生物学のツールを利用した、分子生態学的アプローチが必要となります。
我々は、細菌一細胞や原生生物の一核からのゲノム(全遺伝情報)を解析する「シングルセル・ゲノミクス」などの技術を駆使して、培養を全く介さずに、微生物種の機能解明と遺伝子資源化に取り組んでいます。
研究対象は主にシロアリ腸内微生物群集です。
シロアリは木材の大害虫である一方、自然界では重要な分解者ですが、実は彼ら自身では木をあまり消化することができません。
腸内に共生する数種類の原生生物と数千種類もの細菌が、木片の分解や空気中の窒素を吸収してアミノ酸やビタミンを供給することで、シロアリの繁栄を支えています。
シロアリ腸内微生物群集は、基礎・応用科学の両面から長年に渡って注目され続けていますが、ほとんどの種がシロアリ腸内にのみ特異的に共生する培養不能系統群であるため、詳細な共生機構は未だ不明です。例えば、図に原生生物の核内に共生する2種(赤と緑)の細菌(左図)と、別の原生生物の細胞表面に付着共生する2種(赤と緑)の細菌(右図)を示しましたが、こうした微生物種が何をやっているのか、ほとんどわかっていません。

微生物種

我々は、この複雑で多層的な共生機構を、生態学・進化学・ゲノム科学など様々な側面から研究し、解き明かしていきたいと考えています。

研究成果

代表論文

  • [1] Kuwahara H., Yuki M., Izawa K., Ohkuma M., Hongoh Y. Genome of 'Ca. Desulfovibrio trichonymphae' in a tripartite symbiotic system within a protist cell in the termite gut. ISME J. in press (2016)
  • [2] Zheng H., Dietrich C., Hongoh Y., Brune A. Restriction-modification systems as mobile genetic elements in the evolution of an intracellular symbiont. Mol. Biol. Evol. 33, 721-725 (2016)
  • [3] Ohkuma M., Noda S., Hattori S., Iida T., Yuki M., Starns D. Inoue J., Darby A.C., Hongoh Y. Acetogenesis from H2 plus CO2 and nitrogen fixation by an endosymbiotic spirochete of a termite-gut cellulolytic protist. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 112, 10224-10230 (2015)
  • [4] Murakami T., Segawa T., Bodington D., Dial R., Takeuchi N., Kohshima S., Hongoh Y. Census of bacterial microbiota associated with the glacier ice worm Mesenchytraeus solifugus. FEMS Microbiol. Ecol. fiv003 (2015)
  • [5] Yuki M., Kuwahara H., Shintani M., Izawa K., Sato T., Starns D., Hongoh Y., Ohkuma M. Dominant ectosymbiotic bacteria of cellulolytic protists in the termite gut also have the potential to digest lignocellulose. Environ. Microbiol. 17, 4942-4953 (2015)
  • [6] Sato T., Kuwahara H., Fujita K., Noda S., Kihara K., Yamada A., Ohkuma M., Hongoh Y. Intranuclear verrucomicrobial symbionts and evidence of lateral gene transfer to the host protist in the termite gut. ISME. J. 8, 1008-1019 (2014)
  • [7] Guichard P., Hachet V., Majubu N., Neves A., Demurtas D., Olieric N., Fluckiger I., Yamada A., Kihara K., Nishida Y., Moriya S., Steinmentz M.O., Hongoh Y., Gönczy P. Native architecture of the centriole proximal region reveals novel features underlying their 9-fold radial symmetry. Curr. Biol. 23, 1620-1628 (2013)
  • [8] Hongoh Y. Toward the functional analysis of uncultivable, symbiotic microorganisms in the termite gut. Cell. Mol. Life Sci. 68, 1311-25 (2011)
  • [9] Hongoh Y., Sharma V.K., Prakash T., Noda S., Toh H., Taylor T.D., Kudo T., Sakaki Y., Toyoda A., Hattori M., Ohkuma M. Genome of an endosymbiont coupling N2 fixation to cellulolysis within protist cells in termite gut. Science 322, 1108-1109 (2008)
  • [10] Hongoh Y., Sharma V.K., Prakash T., Noda S., Taylor T.D, Kudo T., Sakaki Y., Toyoda A., Hattori M., Ohkuma M. Complete genome of the uncultured Termite Group 1 bacteria in a single host protist cell. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 5555-5560 (2008)

主な日本語総説

  • [1] 本郷 裕一「シングルセル・ゲノミクスによる未培養腸内細菌研究の可能性」G.I. Research 22: 93-98 (2014)
  • [2] 本郷 裕一「難培養微生物種のゲノム解析による機能解明と遺伝子資源化」日本乳酸菌学会誌24: 164-173 (2013)
  • [3] 本郷 裕一「シロアリ腸内原生生物と原核生物の細胞共生」原生動物学雑誌44: 115-129 (2011)
  • [4] 本郷 裕一「腸内微生物の生態」(シリーズ 現代の生態学 第11巻『微生物生態学』共立出版、日本生態学会編 第9章) pp.134-148 (2011)

教員紹介

本郷 裕一 教授(理学博士)

2000年3月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程修了
2000~2004年 科学技術振興機構・日本タイ国際共同プロジェクト研究員(タイ駐在)
2004~2007年 理化学研究所基礎科学特別研究員
2007~2009年 理化学研究所協力研究員
2009年5月 東京工業大学大学院生命理工学研究科 准教授
2014年11月 東京工業大学大学院生命理工学研究科 教授
2009年 日本農学進歩賞、日本農芸化学会奨励賞、日本ゲノム微生物学会奨励賞など受賞
教育活動
生命科学基礎(100番台)、生命科学基礎実験(100番台)、進化・発生生物学(300番台)、環境微生物学(500番台)
所属学会
日本微生物生態学会、国際微生物生態学会(ISME)、日本ゲノム微生物学会、日本農芸化学会、日本進化学会、日本応用動物昆虫学会、日本生態学会

教員からのメッセージ

本郷教授より

研究は何のためにするのでしょうか? 社会の役に立ちたい、自然の謎を解き明かしたい、お金をもうけたい、など様々でしょうが、まずは「好き」でなければ研究は成り立ちません。

研究を行うには、数多くの英語の文献を読み、頭をフル回転してアイデアを産み、試行錯誤を繰り返して実験結果を出し、最新の手法を学んでデータを解析し、英語で論文を作成し、欧米のライバルの厳しい審査を通過した後に、初めて成果として記録されるのです。

ですから、アルバイトやサークルの片手間にできるはずがありませんし、興味の無い実験テーマに取り組むなど、無理なのです。

自分は何をやりたいのか、どういう研究なら興味を持てそうか、真剣に考えて、研究室を選んでください。

お問い合わせ先

教授 本郷裕一
大岡山キャンパス W3棟 706号室
E-mail : yhongo@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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