未来

研究も教育も、実践をとおして磨かれる

神戸市立工業高等専門学校
都市工学科 講師

髙田 知紀 さん

髙田 知紀さん

現在の仕事について教えてください。
高専の土木系学科で、主に都市計画やまちづくりに関する研究・教育を行っています。研究については大学院時代から引き続き「合意形成」をメインテーマに、環境保全やまちづくり、防災などの現場で、市民や行政の方々と協働でプロジェクトを展開しながら、理論と技術の構築に努めています。高専は大学と同じ高等教育機関として位置づけられますが、16歳から20歳まで(専攻科も含めば22歳まで)の学生が同じ場で学んでいるという点で、少し特殊な環境かもしれません。若い学生たちを技術者として送り出すための教育と、社会の課題解決のための研究活動を両立する必要があり大変ですが、その分やりがいのある仕事だと感じています。
東工大での経験や学びは、いまの仕事にどう活きていますか?
恩師の桑子敏雄先生からは「知っている、わかっている、できる、の3つのレベルにはそれぞれ大きな差がある」と教わりました。合意形成は現場で求められており、いかにして「できる」レベルで理論と技術をとらえるかということが重要です。わたしは常に、現実社会の複雑性のなかに身を置きながら、そこでの実践を通してみえてくるものを何よりも大切にしています。それは研究だけでなく、教育においても同様です。わたしが東工大で経験したように、高専の学生たちにもできるだけたくさんの人やモノに触れることで、複合的で答えのない問題に対して積極的にアプローチする姿勢を身に付けてもらいたいと考えています。
今後の目標を教えてください。
風土性にもとづいた新しい地域マネジメント理論を構築することです。日本の国土空間には、過去の人びとの営為や自然現象の痕跡などが深く刻まれています。それらの痕跡にじっと目を凝らし、現在を生きる多様な人びとが話し合い、未来にどのような地域社会を残していくか。談義と実践によって合意を目指す不断の努力のなかでのみ、わたしたちの暮らす国土のあり方がみえてくるのだと思います。とても難しい課題ですが、これまでどおりひとつひとつ実践を重ねながら、そこに暮らす人びとの人生の舞台にふさわしい国土空間の形成に貢献していきたいと考えています。
最後に、東工大を目指す人に一言お願いします。
東工大では、科学的・合理的思考は自ずと身に付くと思いますが、現実の社会は、理不尽なこと、非合理的なことがあふれています。大事なのは、専門的知見をもちながらも、あいまいさや複雑性、不確実性に対応できるしなやかな感覚をもつことだと思います。そのためにも在学中に自身の専門以外の様々なフィールドに出て、多様な考えに触れることが大切だと思います。

たかだ・ともき(兵庫県出身)

2008年
東京工業大学 大学院社会理工学研究科価値システム専攻 修士課程入学
2010年
東京工業大学 大学院社会理工学研究科価値システム専攻 修士課程修了
2013年
東京工業大学 大学院社会理工学研究科価値システム専攻 博士後期課程修了
2013年
神戸市立工業高等専門学校 都市工学科 助教
2014年
神戸市立工業高等専門学校 都市工学科 講師

※記事の内容は取材当時のものです

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