材料系 News

上田研究室 ―研究室紹介 #4―

耐熱金属材料の高温酸化現象を解明し、エネルギー分野に貢献する

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2016.09.06

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、高温における金属の劣化機構を解明している、上田研究室です。

准教授 上田光敏

金属分野
エネルギーコース
研究室:大岡山キャンパス・南8号館304号室
准教授 上田光敏

研究分野 金属の高温酸化 / 高温物理化学
キーワード 耐熱鋼の高温水蒸気酸化、鉄鋼材料の高温酸化と脱スケール特性の改善、耐熱合金の高温酸化に及ぼす母材結晶方位の影響
Webサイト 河村研究室・上田研究室="別窓"
上田光敏 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

はじめに

我々は、限られたエネルギー資源を有効に利用し、地球環境に負荷をかけない持続可能な社会を築いていかなくてはいけません。当研究室では、火力発電の高効率化や鉄鋼生産における各種高温プロセスの最適化・効率化を実現するための研究を行っています。

研究の主な内容は、高温における金属材料の環境劣化に関するもので、高温における鉄鋼材料や耐熱合金の劣化機構を解明し、これらの材料を長期にわたって使用するための指針などを提案しています。

「金属が酸化する」という現象は、日常生活の中でごく当たり前に見られるものですが、材料と環境が織り成す自然現象であり、その詳細は未だ明らかになっていません。また、高温における金属材料の環境劣化は、非常に地味な現象である反面、社会基盤を支える産業においてとても重要な現象です。

研究室について

実験装置の一例:写真は水蒸気酸化試験装置の一部。実験装置はすべて手作り。この装置を用いて、様々な耐熱金属材料の水蒸気酸化試験を行う。

実験装置の一例:写真は水蒸気酸化試験装置の一部。実験装置はすべて手作り。この装置を用いて、様々な耐熱金属材料の水蒸気酸化試験を行う。

当研究室に所属した学生は、自身の研究を通して、金属の高温酸化を理解する上で必要となる熱力学や反応速度論を基礎から丁寧に学んでいくと共に、実験装置の作製など研究に必要なスキルを身に着けていきます。学生の自主性を重んじた研究室運営を心がけています。

また、当研究室では、鉄鋼材料を中心とした金属の高温酸化に関する基礎的研究を行っており、多くの他研究室とも連携して研究を進めています。次に、現在行っている研究テーマの中で代表的なものを紹介します。

研究テーマについて

1. 新規オーステナイト系耐熱鋼の開発
―優れた高温強度と耐酸化特性の両立を目指して―

新規オーステナイト系耐熱鋼に形成した酸化皮膜の一例:800℃/336h の水蒸気酸化試験で約5μmの酸化皮膜が形成した。酸化皮膜は2相構造を呈しており、下側の層(色の濃い層)が保護性酸化皮膜。このような構造を長時間維持することが求められる。

新規オーステナイト系耐熱鋼に形成した酸化皮膜の一例:800℃/336h の水蒸気酸化試験で約5μmの酸化皮膜が形成した。酸化皮膜は2相構造を呈しており、下側の層(色の濃い層)が保護性酸化皮膜。このような構造を長時間維持することが求められる。

東日本大震災以降、使用されている電力のほぼ9割が火力発電でまかなわれています。一方、化石燃料を使用する火力発電は、他の発電手段に比べ、多くの二酸化炭素を排出します。現状の電力供給を維持しつつ、二酸化炭素の排出を抑制して、低炭素社会を実現するためには、火力発電プラントの更なる高効率化が必要不可欠となります。

その鍵を握るのは「材料開発」であり、蒸気条件の高温・高圧化に耐えうる優れた耐熱金属材料の開発が重要になります。当研究室が注目するのは、「使用環境における耐酸化特性」であり、優れた高温強度を発揮するように合金設計された新規耐熱金属材料を、使用環境で如何に長持ちさせるか?という点に着目した研究を行っています。

当研究室では、長年にわたり火力発電プラントのボイラー配管等に使用されている耐熱鋼の高温水蒸気酸化に関する研究を行ってきました。耐熱鋼は、その表面に保護性酸化皮膜が形成するように合金設計されていますが、水蒸気を含む雰囲気では、保護性酸化皮膜が形成しにくくなることが知られています。耐熱鋼をボイラーのような水蒸気含有雰囲気で安定に使用するためには、この現象のメカニズムを明らかにする必要があり、学問的にも工業的にもやり甲斐のある研究テーマになっています。

2. 各種高温プロセスの最適化・効率化に関する研究

鉄鋼材料は現代社会において欠かせない材料の1つであり、その性能は日々向上しています。鉄鋼生産の現場には様々な高温プロセスが存在し、鋼板は常に酸化する環境に置かれています。各種高温プロセスにおいて鋼板表面に形成する酸化スケールを的確に制御することができれば、鋼板の品質が向上するとともに、生産性が上がります。

当研究室では、鋼の高温酸化に関する知見や経験を生かし、鉄鋼生産における熱延工程や溶融めっきプロセスにおける焼鈍工程に関して、その最適化や効率化を実現するための基礎研究を行っています。

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

准教授 上田光敏
E-mail : mueda@mtl.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3311

※この内容は2016年4月発行の材料系 金属分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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