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日経新聞主催のシンポジウムで大隅栄誉教授と池上特命教授が対談

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2017.06.21

日経新聞主催のシンポジウムで大隅栄誉教授と池上特命教授が対談

2017年3月24日 イイノホールにて ©日経チャンネル

3月24日、株式会社日本経済新聞社主催の大学改革シンポジウム「改革はどこまで進んだか」に本学の大隅良典栄誉教授とリベラルアーツ研究教育院の池上彰特命教授が登壇しました。

本シンポジウムは、社会の変化に伴う大学改革の最前線を踏まえ、学生を育む大学のあり方について議論する目的で2012年から開催され、池上特命教授はこれまで7回登壇してきました。大隅栄誉教授と池上特命教授は、シンポジウムの中で「大学と私」というテーマのもと対談を実施し、当日は約400名にも上る聴講者が集まりました。

対談ではまず、2人の出会いについて触れ、昨年、池上特命教授が大隅栄誉教授へ「生命科学」をテーマにしたインタビューがきっかけで、その内容をのちに池上特命教授の著書にまとめたことが語られました。

「栄誉教授」という称号について「名誉教授と何が違うのか」と尋ねられた大隅栄誉教授。「特に称号にこだわらないのでよくわからない」との率直な回答には、大隅栄誉教授の人柄が滲み、会場全体があたたかな笑いに包まれました。

『池上彰が聞いてわかった生命のしくみ 東工大で生命科学を学ぶ』(朝日新聞出版 2016年発行)

日本全体が余裕のある社会であってほしい

大隅良典栄誉教授 ©日経チャンネル

大隅良典栄誉教授 ©日経チャンネル

昨年10月のノーベル生理学・医学賞受賞発表以来、大隅栄誉教授は日本のみならず世界中からの注目を集めています。今回のノーベル賞受賞について、「地元福岡を始め多くの人が喜んでくれ、“基礎科学の分野でノーベル賞を取ったことが心から嬉しい”とお世辞抜きで言ってくれる人がいたことがとても嬉しい。科学について定着して楽しむことのできる世の中になってほしい」と喜びを表しました。

大隅栄誉教授は自身の学生時代を振り返りながら、「飛びぬけて優秀だと思ったことはない。ごく普通の学生だった」と話します。夫人から冗談交じりに「『いまの時代なら確実に、周りについていけない』と言われることもある」と言い、「今よりのんびりと先を見られる良い時代に生まれた」「今は難しい時代だが、日本全体が余裕のある社会であって欲しい」と語りました。

また若者に向けて、情報を自分で選択する目を持つことが大事だと強調します。大隅栄誉教授が学生だった頃は、自身が関係する分野で目を通さないといけない雑誌は毎月4冊ほどであり、それも2ヶ月かけて海外から船便で届いていましたが、現在は、同等の雑誌が50冊近くに増えたばかりか、ネットを使えばどんな情報でもすぐにアクセスできるようになりました。「面白い論文が、小規模な雑誌に載っていることもある」としたうえで、「自分にとって本当に価値のある情報とは何か、自分で選択する目が重要だ」と話しました。

どんな有能な人でも、1人で大きな仕事はできない

大隅栄誉教授は自身のこれまでの経験からどんな有能な人でも、1人で大きな仕事はできないことに言及しました。大隅研究室の運営方針は「なるべく違う方法論でいろいろな方向から研究を進め、攻めていく」というものです。「日本人は異なる個性を持った人を抱えることが苦手で、同質な人の集団でまとまることが多い。若者が“人がやらないことをやろう”と考えてくれると嬉しい」「ボスを越えるということは、ひいては科学の進歩につながる。若者にはぜひ、“自分のボスは当然越えていく”という気概を持ってほしい」と話しました。

役に立つ、立たないで科学を評価しないで「科学を文化にしてほしい」

最近、英科学誌『ネイチャー』が、日本の研究力の低下について指摘したことが話題になりました。大隅栄誉教授は、現代日本の研究環境が持つ問題点として、「研究外の業務で忙しく、論文を書く時間がない」「運営費交付金の減少」「競争的資金を獲得するため、いつも成果を上げないといけない」などの点を挙げました。「人から『好きなことやってていいですね』と言われて『そうですね』と言えるのがいい大学である」と話すと、会場からは笑いが起きました。そして「自分の上司にあたる研究者が楽しそうに研究をしていないと、大学で研究を続ける若者は少なくなってしまう。研究者の裾野をどれだけ広げられるかが大事で、広げた分だけ“尖った”研究者が出てくる」と指摘しました。

また、「2~3年後に製品化を考えているものは、役には立たない。オートファジーの論文が初めて『ネイチャー』に掲載され、新聞の記事になった際の見出しは『やせ薬の何かに使えるかもしれない』といったような内容で、最初から癌研究の役に立つと思って研究を始めたわけではない」と話しました。

「私が長年にわたって酵母を研究し続けている理由は、基本原理を解けば、必ず役に立つと考え信念を持っているから。自分の研究も、すぐにアルツハイマーの特効薬を作るという意味で役に立つとはいまだに思っていない。役に立つということの意味を社会がもう少しきちんと考えてみる必要がある」と語りました。

池上彰特命教授 ©日経チャンネル

池上彰特命教授 ©日経チャンネル

池上特命教授は、「思いもよらない研究は予期せぬタイミングで花開く」として、例として自身のテレビ番組で2002年ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏と会った際のことを話しました。「『小柴氏の研究が何の役に立つのか』と訊くと、小柴氏からは『何の役にも立たない』との返事があったが、現在はそれを元に、火山の中でマグマの活動がどうなっているか、人間のレントゲン写真のように見る研究が進んでいる」と述べました。

「科学は人間の文化活動の一つという価値観を持って楽しんでほしい」

結びの言葉として大隅栄誉教授は「日本では、科学と技術が一緒に扱われることが多い中、海外ではサイエンスとテクノロジーとが区別されている。昨年ノーベル賞の授賞式でスウェーデンのストックホルムに赴いた際に、ノーベル賞はスウェーデンの文化活動の一つで、国民全員で楽しんでいた。科学をみんなが知ろうとして楽しみ、人間の文化活動の一つとなる社会になって欲しい」との想いを語りました。

これを受けて、池上特命教授は、「文化と聞くと人文や社会科学系を想起しがちだが、科学を文化にすることがやがて日本にとってプラスになるだろう」と述べ、対談を締めくくりました。

©日経チャンネル

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