電気電子系 News

小田・河野研究室 ―研究室紹介 #18―

低次元半導体材料、半導体量子構造を用いたナノデバイス、量子効果デバイス、テラヘルツデバイス

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2016.08.16

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、ナノテクノロジーで未来のコンピューターを作る、小田・河野研究室です。

教授 小田俊理 准教授 河野行雄

デバイスグループ
電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・南9-805 / 南9-804
教授 小田俊理別窓
准教授 河野行雄別窓 助教 川那子高暢別窓

研究分野 ナノエレクトロニクス、半導体デバイス、量子効果デバイス
キーワード シリコンナノデバイス、量子ドット、量子情報、テラヘルツデバイス
Webサイト 小田・河野研究室別窓

主な研究テーマ

小田・河野研究室では、シリコン量子ドットの粒径、表面状態、位置を精密制御して作製し、量子ドット相互間の電子トンネル過程、発光、電子放出などの新しい機能デバイスに基づいた、革新的な情報処理技術を展開しています。シリコン量子ドットやナノワイヤの集積構造用いて、ボトムアップ型アプローチと微細加工によるトップダウン型アプローチの融合を図ることで、エレクトロ&メカニカル量子特性の精密エンジニアリングを行い、任意の基板上に新原理素子・回路を構築する「ナノメカ・情報エレクトロニクス」の実現を目指しています。更に、究極の情報処理技術として期待されている量子情報処理技術や光と電波に挟まれた未開拓電磁波テラヘルツ波のデバイス開発にも取り組んでいます。

最近の研究成果

ネオシリコン創製に向けた構造制御

ナノ結晶シリコン形成装置(左)、量子ドットの電子顕微鏡写真(中央)および構造制御(右)

図1.ナノ結晶シリコン形成装置(左)、量子ドットの電子顕微鏡写真(中央)および構造制御(右)

室温で量子効果を顕在化するためには10nm以下の加工寸法が要求されます。本研究では、パルスプラズマ法による直径8±1nmの均一粒径ナノ結晶シリコン形成技術と、電子線描画による極微細電極形成技術を組み合わせて、超微細シリコンデバイスを作製し、単電子トンネルや無衝突伝導などの量子効果を観測しています。

この技術を基に、ナノ粒子間の相関制御に着目した新材料「ネオシリコン」のコンセプトを提案し、研究を推進しています。 ナノ結晶シリコンドットの集積化技術として、溶液を用いる方法や、ナノテンプレートの使用などを検討しており、ネオシリコンの構造制御技術の確立を目指しています。

ネオシリコンを利用した機能デバイス

ナノシリコン単電子トンネル特性とナノドットフラッシュメモリ

図2.ナノシリコン単電子トンネル特性とナノドットフラッシュメモリ

ネオシリコン作製技術と電子線描画によるナノ構造作製技術を駆使し、新しい機能デバイスの開発を推進しています。例えば、ナノ結晶シリコンを伝導層として用いる低電圧低真空で動作可能な平面型バリスティック電子放出素子や、ナノ結晶シリコンをメモリのノードとして用いるナノドットフラッシュメモリの研究を行っています。また、電荷を保持したナノ結晶シリコンを含むフローティングゲートの機械的動作を利用した、全く新しい原理のNEMSメモリ素子の研究を推進しています。

テラヘルツデバイス・システムの研究

ワンチップ型テラヘルツ波撮像デバイス

図3.ワンチップ型テラヘルツ波撮像デバイス

テラヘルツ波の計測技術は産業から医療に至る広範囲な分野での活用が期待されています。ところがテラヘルツ帯は電波領域と光領域の間に位置することから、新しい材料やデバイス構造を考案・開発することが求められる、挑戦的な研究分野です。本研究では、半導体量子構造やグラフェンを微細加工することにより、ワンチップ構造でテラヘルツ波を分光したり撮像したりするデバイスの開発を目指しています。これまで半導体デバイスの微細化・高性能化がトランジスタやレーザーを生み出し、私たちの生活を劇的に変えたのと同様に、ナノ構造による新しいテラヘルツ技術の創出が産業や生活の質の向上に大きく貢献すると期待できます。

量子情報エレクトロニクスの研究

多重量子ドットの静電的・量子力学的結合状態の観測

図4.多重量子ドットの静電的・量子力学的結合状態の観測

量子情報処理は量子力学的物性を論理演算に利用しており、現存する情報処理の速度をはるかに上回る性能を持つことが期待されています。本研究では、シリコン量子ドット中の電子スピン状態を情報の1単位(量子ビット)として用いることを試みています。このシリコン量子ビットは、量子状態のコヒーレンス時間が長いこと、また多重量子ビットの集積化が可能という利点があります。最近、2つの量子ドットが結合したデバイスを用いて、電子スピン状態の観測に成功しました(米国ハーバード大学との共同研究)。また集積化を目指し多重量子ドット構造の作製も行い、電気伝導特性を詳しく調べました。これらの結果は世界的にも注目を集めています。この技術をさらに発展させ、高周波操作や時間分解測定を行うことで、電子スピンの回転操作や高速読み出しを目指し、量子情報エレクトロニクスの開拓を行います。

2次元層状材料の界面に関する研究

遷移金属ダイカルコゲナイドの1つである二硫化モリブデン(MoS2)の構造と断面透過電子顕微鏡による層状構造の観察

図5.遷移金属ダイカルコゲナイドの1つである二硫化モリブデン(MoS2)の構造と断面透過電子顕微鏡による層状構造の観察

グラフェンに代表される2次元層状材料は、非常に興味深い性質を持つため、基礎および応用面から大変注目されています。本研究では、遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる化合物層状半導体を用いた電界効果トランジスタの作製プロセス、デバイス構造および材料技術に関する実験を行っています。特に、素子の性能や機能は単体の材料ではなく、異種材料で構成される界面の現象によって決定されるため、界面構造と電気特性の関係を明らかにすることを目的としています。

教員からのメッセージ

小田先生、河野先生より
小田・河野研究室は海外にも広く研究ネットワークを広げ国際共同研究を進めています。毎年、大学院生がケンブリッジ大学やハーバード大学、デルフト工科大学、サザンプトン大学などに短期留学をしています。現在、小田・河野研究室では、欧米アジア諸国から10名の留学生が滞在しており(2016年1月現在)、自然に国際感覚が身に付く環境です。もっと、詳しいことを知りたい人は、いつでも気軽に研究室を訪ねてください。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 小田俊理
E-mail : soda@pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3048

准教授 河野行雄
E-mail : kawano@pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3811

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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