電気電子系 News

黒澤研究室 ―研究室紹介 #13―

弾性波動を利用したアクチュエータ、エコーロケーション、音響トランスミッタ、環境振動発電

  • RSS

2016.07.26

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、音響振動によるアクチュエータとセンシングを開発する、黒澤研究室です。

准教授 黒澤実

波動・光および通信グループ
電気電子コース
研究室:すずかけ台キャンパス・G2棟614号室
准教授 黒澤実別窓

研究分野 メカトロニクス・電気音響変換器・音響工学
キーワード アクチュエータ、圧電デバイス、反響位置測定、計測制御、PZT・ニオブ酸リチウム・サファイヤ、音響デバイス
Webサイト 黒澤研究室別窓

研究の概要

電気音響変換デバイス技術を応用したアクチュエータやセンサおよびシステムに関する研究を行っている。研究内容は、電気信号を機械振動に変換するための材料技術、機械振動を効率よく励振し利用するための機械工学の知見、基本となる電気電子工学と広範である。また音響信号の実時間処理や制御システムへの応用などのために、デジタル信号処理システムの開発も行っている。

研究テーマ

弾性表面波モータ

人間の手のように精緻に・自由に・力強く動作する人工の手を創出するには、これまでにない高性能なアクチュエータ技術が必要とされている。手を動かしている筋肉は、単位断面積あたり20〜100N/cm2という大きな力を発生することができる。筋肉は非常に優れたアクチュエータであるため、精巧な手の動きが可能となっている。これまで、筋肉のように小型軽量で力強いアクチュエータを実現できなかったため、人間の手と同じ大きさと重量で同等の動きを実現することが不可能であった。

我々が研究・開発してきた弾性表面波モータでは,単位断面積あたり100N/cm2の力を発生することが可能となってきた。さらに1m/s以上の速度と1nmの微細な動きを実現している。弾性表面波モータは,ニオブ酸リチウムを用いた圧電トランスデューサにより励振された10MHzの音響波を駆動力源としている。音響波の励振により弾性体表面の粒子は楕円軌跡を描いて振動するので,表面に押し当てたスライダとの間で発生する摩擦力に依り,スライダには速度と推力が発生する。高周波振動による摩擦駆動を利用することで,大出力を実現している。摩擦に対する耐久性向上のため,導波路にサファイアを用いたモータも研究している。

弾性表面波モータを発展させ、将来的には人の手を実現することも可能となるような、高性能なアクチュエータの研究を行っている。さらに60個ものアクチュエータを協調させて複雑で精緻な動作を実現するためには、新たな制御アルゴリズムも必要となるであろう。

弾性表面波モータの原理と応用

図1.弾性表面波モータの原理と応用

試作例(最大速度1m/s, 最大推力20N)

図2.試作例(最大速度1m/s, 最大推力20N)

エコーロケーションシステム

静電型トランスデューサ

図3.静電型トランスデューサ

コウモリのエコーロケーションは、超音波を対象物に放射し、反射波を聞き取ることで対象物の位置や動きといった空間情報を取得している。このエコーロケーションを実現するためには、音源となるデバイスと、受波した信号を簡単な仕組みで高速に処理するシステムが必要である。

高速な信号処理を実現するため、1ビットΔΣ変調信号を用いた簡便な相互相関処理方法を開発した。1ビット信号処理回路をFPGAに実装し、実時間で対象物体の3次元的な位置と速度ベクトルを検知するシステムについて研究を進めている。また、空中に超音波を放射するデバイスに関しては、静電方式により音波を発生させる素子を研究している。静電トランスデューサは、20〜200kHzに渡る広帯域の超音波を、100dB以上の高音圧の音波として発生することを目指している。

エコーロケーションシステムと1bit演算による相互相間信号処理

図4.エコーロケーションシステムと1bit演算による相互相間信号処理

環境振動発電

環境発電用圧電バイモルフ振動子

図5.環境発電用圧電バイモルフ振動子

圧電デバイスを用いた環境振動発電は、分散配置したセンサシステムなどへの電力供給方法として実用化が期待されている。圧電デバイスによる振動発電は、出力や効率の観点からデバイスの最適化を進める必要がある。モデル解析を行うことで最適化の方法を研究し、新たなデバイス構造で、高出力化を実現することを目指している。

教員からのメッセージ

黒澤先生より
自分の手を動かして何かを作り上げる喜びと、成功したときの感動を大切に。そのために自ら考え学ぶ努力を。そして世の中に役に立つ技術とは何かを考え実践しよう。研究においてはたくさんの失敗を経験することが大事である。そしてその失敗の原因が何であったのかを突き詰めて,原因と結果の因果関係を明らかにできる能力と表現力を培ってほしい。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

准教授 黒澤実
E-mail : mkur@ip.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5598

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE