電気電子系 News

西方研究室 ―研究室紹介 #6―

環境電磁工学(電波吸収、電波遮蔽、電磁波源推定、伝導雑音対策、生体EMC)、高周波材料評価、空間音響

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2016.07.01

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、身の回りにあふれる電磁波と電磁両立性の問題を解決する、西方研究室 です。

准教授 西方 敦博

波動・光および通信グループ
電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・西9-818
准教授 西方敦博別窓

研究分野 環境電磁工学(EMC)、高周波材料評価、空間音響
キーワード 電波吸収、電波遮蔽、電磁波源推定、伝導雑音対策、生体EMC、導波管法、音源定位
Webサイト 西方研究室別窓

主な研究テーマ

IT化やモバイル通信の発展の影で、電子機器・通信機器の正常な動作を保つための努力が払われています。不要電磁波は目に見えませんが、その対策なしに現代社会は成り立ちません。電波の安全性の確保の問題もあります。当研究室では不要電磁波を抑える・遮る・突き止めるための新しい技術を研究しています。関連して、生体に電波が及ぼす熱影響、高周波材料評価技術も研究しています。また、身近な波である可聴音波の音源推定も扱っています。

  • マイクロ波帯~ミリ波帯における複素誘電率・複素透磁率の導波管測定法
  • 人工媒質を用いた電波の吸収と遮蔽、能動的伝導雑音対策
  • 電磁波および音波の波源推定

最近の研究成果

導波管貫通法による材料定数測定

複素誘電率・複素透磁率の測定法として、方形導波管内部を横断方向に棒状サンプルを貫通させる導波管貫通法を提案しています。この方法が従来の方法と比べて優れている点としては固体、液体、紛体を問わず測定ができ、サンプルの着脱が容易、また比較的少量のサンプルで測定が可能です。この方法を用いて、-40℃~+125℃という広い温度範囲での複素誘電率・複素透磁率の測定を実現しました(図1)。この測定法は、自動車の衝突防止レーダが広い温度範囲で安定に動作するための電波吸収材料の開発に応用されています。図2は、どこにでもある標準物質としての水の複素比誘電率を測定した結果(ドット)であり、報告されている周波数分散式の値(実線)と一致することを確かめたものです。

図1 導波管貫通法の温度可変測定系

図1.導波管貫通法の温度可変測定系

図2 水の複素比誘電率測定結果

図2.水の複素比誘電率測定結果

円形導波管TE01モードを用いた複素誘電率の非破壊測定

図3 円形導波管TE01モード変換器の内部

図3.円形導波管TE01モード変換器の内部

平板状または厚い材料の複素誘電率を非破壊測定するために、円形導波管のTE01モードを用いる導波管プローブ法を提案しています。この方法では、円形導波管の端部にサンプルを押し当てて反射係数を測定し、その値から複素誘電率を算出します。この方法の利点は、現在広く用いられている同軸プローブ法の弱点である隙間の影響を抑えられることです。

本方法を実現するカギは、純度の高い円形TE01モードを発生させるモード変換器の設計です。図3は方形導波管から2分岐を繰り返す16分岐立体回路の内部構造です。この立体回路によって、円形導波管にモード純度の高い電磁界を発生させ、かつ装置そのものが低反射であることを実現しました。図4にモード変換器の外観を示し、図5に汎用基板材料FR4の測定結果を示します。

円形導波管TE01モード変換器

図4.円形導波管TE01モード変換器

FR4基板の複素比誘電率の測定結果

図5.FR4基板の複素比誘電率の測定結果

点音源推定、双極子電磁波源推定

ヒトは2つの耳で、音を聴くだけでなく音の出所を知るという「音源定位」を行うことができます。これを機械に行わせるための計算アルゴリズムを研究しています。図6は、ダミーヘッドというヒトの頭部型のマイクロホンで取得した2チャンネル音声から音源位置を推定した結果を表しており、おでこの左側の赤い領域に波源があるらしいと推定されています(実際にその中央付近に音源があります)。これが実用化されれば聴覚の補助や感覚代行、ロボット用聴覚、遠隔存在感などへの応用が期待できます。一方、2つの耳を2つのアンテナに置き換えると電磁波源の推定が可能です。図7は2つのアンテナを一体化した2ポートアンテナとそれを用いた電気双極子波源の推定結果の一例です。電波の出処が目に見えるようになれば、不要電磁波対策のための強力な道具となることでしょう。

ダミーヘッドによる点音源推定

図6.ダミーヘッドによる点音源推定

図7 2ポートアンテナ(左)とそれを用いた電気双極子波源の推定結果(右)。青い領域に波源があると正しく推定されている。

図7.2ポートアンテナ(左)と
それを用いた電気双極子波源の推定結果(右)。
青い領域に波源があると正しく推定されている。

ミリ波帯における生体EMC実験

60GHzミリ波の掌へのばく露実験

図8.60GHzミリ波の掌へのばく露実験

ミリ波は波長が短く直進性が強いため、焦点を結ぶと高い電力密度が生じます。今後ミリ波による高速通信やセンシングが普及していくうえで、生体の安全性を確保するための基礎データが求められています。図8は60GHzミリ波の集束ビームを手のひらに当てたときの閾値(気が付くレベル)をボランティア実験によって測定している様子です。人体はミリ波をよく吸収する材料でできているため、体表面から浅い領域で発熱し、比較的小さな電力でも暖かいと感じます。

教員からのメッセージ

西方先生より
上記の他にも人工媒質による電波吸収体などの研究も行っています。EMCはどちらかというと縁の下の技術領域ですが、課題の宝庫でもあります。この領域に新規アイディアをつぎ込んでブレークスルーを実現するために、一緒に研究しませんか。電磁波や音波などに興味がある方は、ぜひコンタクトをとって見に来てください。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

准教授 西方敦博
E-mail : nishikata.a.ab@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3231

            

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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