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平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰で岩澤伸治教授、鷹谷絢准教授、前田和彦准教授が受賞

岩澤教授「科学技術賞:研究部門」鷹谷准教授・前田准教授「若手科学者賞」

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2016.05.19

文部科学大臣表彰の「科学技術賞」は科学技術分野で顕著な功績をあげた者を対象としたもので、「開発部門」、「研究部門」、「科学技術振興部門」、「技術部門」、「理解増進部門」に分かれて表彰されています。

「若手科学者賞」は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に表彰されます。

このたび岩澤伸治教授が、下記業績により「科学技術賞」研究部門を受賞しました。

また、鷹谷絢准教授、前田和彦准教授が下記業績により「若手科学者賞」を受賞しました。

科学技術賞(研究部門)

岩澤伸治 理学院 教授

受賞業績:遷移金属触媒を用いる二酸化炭素の再資源化反応の研究

岩澤伸治 教授

岩澤伸治 教授

二酸化炭素を炭素資源として再利用し、有用な有機化合物へと変換する方法の開発は、化石資源の枯渇の問題に対する一つの解決策となりうるものです。しかし二酸化炭素は反応性が低く、効率の良い触媒的な二酸化炭素固定化反応の開発研究は、これまで立ち後れていました。

我々は、独自の遷移金属錯体触媒の創製、ならびに新たな触媒系の構築に基づいて、入手が容易な有機分子と二酸化炭素を直接反応させ、有用な化合物へと変換することのできる効率の良い反応を開発し、二酸化炭素の再資源化への道を切り拓くことに成功しました。

本研究により、ベンゼンやトルエンなどの原油にも含まれる芳香族炭化水素や不飽和炭化水素を直接二酸化炭素と反応させるなど、従来困難であった触媒的二酸化炭素固定化反応を種々実現することができました。今後さらに新しく効率の良い二酸化炭素の資源化反応を開発していきたいと考えています。

ロジウム触媒を用いるベンゼンと二酸化炭素からの安息香酸の合成

ロジウム触媒を用いるベンゼンと二酸化炭素からの安息香酸の合成

これらの成果は、なかなか思うように期待する反応が進まない中、粘り強くさまざまな試行錯誤を繰り返し、新たな可能性を見出してくれた学生の皆さんの献身的な努力なしには、なし得なかったものであり、研究室の皆さんに心から感謝したいと思います。

若手科学者賞

鷹谷絢 理学院 准教授

受賞業績:高周期14族元素配位子を用いた効率的分子変換反応の研究

鷹谷絢 准教授

鷹谷絢 准教授

新しい分子の創製は、化学研究の醍醐味の一つです。我々は、ケイ素やゲルマニウムなどの高周期14族元素を配位子として持つ新しい遷移金属錯体を設計・合成し、これらを触媒として利用することで、これまで困難だった分子変換を可能にする新しい合成反応の開発を目標に研究を行ってきました。

その結果、二酸化炭素や不飽和炭化水素分子を有用有機化合物へと効率的に変換できる新しい合成反応を種々実現するとともに、従来の金属触媒とは一線を画するユニークな触媒機能を解明することができました。

今後も、独自の分子触媒で切り拓く新しい合成化学を目指し、研究に励んで行きたいと思います。

本研究は、本学岩澤伸治教授のご指導の下、多くの本学学生・博士研究員の方々と行ってきたものです。素晴らしい共同研究者達に恵まれたおかげで、お互い切磋琢磨しながら、研究を楽しむことができたと感じています。この場を借りて改めて感謝いたします。 

前田和彦 理学院 准教授

受賞業績:太陽光と水から水素を製造する半導体光触媒の研究

前田和彦 准教授

前田和彦 准教授

受賞対象となった私の研究は、太陽光エネルギーを吸収して水を分解し水素を製造する、「光触媒」と呼ばれる魔法の粉を開発するというものです。水素はクリーンエネルギーキャリアとして近年その重要性が増しており、地球上に豊富な水と無尽蔵な太陽光エネルギーから作り出すことができれば大変魅力的です。特に粉末状の光触媒が使えれば、太陽光が降り注ぐ広大な面積にも展開できる可能性があり、将来的な実用化への道筋も見えてきます。

私は、これまでに報告されていない、すなわち地球上に存在しない人工化合物に着目して研究を進め、オキシナイトライドとよばれる材料群が太陽光水分解に有効な光触媒となることを明らかにしました。さらには、光触媒上で起こる表面反応促進に着目することで、最終的には、緑色植物の光合成に匹敵する太陽光エネルギー変換効率を人工系ではじめて実現することに成功しました。 

水の可視光分解を目指した半導体光触媒および助触媒材料の開発

水の可視光分解を目指した半導体光触媒および助触媒材料の開発

受賞にあたり、関係者の皆様には厚く御礼を申し上げます。特に、学生時代に指導してくださった堂免一成先生(東京大学教授)、原亨和先生(本学教授)、難しい局面で一緒に頭を悩ませ議論してくださった共同研究者の皆様、そして日々支えてくれた家族・友人らに感謝いたします。今回の受賞を励みとして、今後も研究・教育活動に励んで参ります。

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