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大隅良典栄誉教授によるノーベル・レクチャーが盛況のうちに終了

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2016.12.13

大隅栄誉教授が、12月7日14時30分(スウェーデン時間)から、ストックホルムのカロリンスカ研究所にてノーベル・レクチャー(ノーベル賞受賞者記念講演)を行いました。

大隅良典栄誉教授によるノーベル・レクチャーが盛況のうちに終了

ノーベル・レクチャーは一般にも開放されており、厳しい寒さにもかかわらず、ホールの前には長時間並んで待つ人も多く、開館するとすぐに満席となりました。講演開始前の会場には、大隅栄誉教授のこれまでの共同研究者との記念写真や研究風景などの映像がスクリーンに映されました。また、壇上には、スウェーデンらしくモミの木が多数置かれ、フォトセッションではスウェーデンの民族衣装を着た女性も登場しました。ノーベル財団からの挨拶の後、カロリンスカ研究所のマリア・マスッチ教授による紹介を受けて大隅栄誉教授が壇上に上り、夫人も見守る中、約1時間にわたって講演を行いました。

ノーベル・レクチャーの会場(右手奥)

ノーベル・レクチャーの会場(右手奥)

大隅栄誉教授のノーベル・レクチャーを楽しみに待つ人々

大隅栄誉教授のノーベル・レクチャーを楽しみに待つ人々

登壇する大隅栄誉教授

登壇する大隅栄誉教授

ノーベル・レクチャー開始前の会場の様子

ノーベル・レクチャー開始前の会場の様子

生い立ちについて

ノーベル・レクチャースタート

ノーベル・レクチャースタート

大隅栄誉教授は冒頭、自身の生い立ちを話し、「自然とのふれあいを通してインスピレーションを育てて欲しい」と聴衆に語りかけました。戦後の貧しい時代に福岡で生まれ、母親の重い病気や食べ物に不自由していた子供時代について述懐しました。大自然に恵まれた九州の田舎で育てられ、自然から刺激を与えられてサイエンスに興味が沸いたこと、東京大学に入学後、進路に迷った大隅栄誉教授は当時新しい分野であった分子生物学の分野で研究を始めることを決意したと話しました。

リボソームと液胞の研究でタンパク質の平衡を意識

続いて、自身が最初に取り組んだ研究について紹介しました。東京大学の今堀和友教授の研究室で行ったタンパク質合成に不可欠なリボソームの分析が初めての研究の経験となり、合成の継続性が強く印象に残ったと話しました。博士号取得後、米国ロックフェラー大学で3年間の研究員生活を送っていた大隅栄誉教授が、そこで初めて酵母と出会い、すぐに遺伝学における有用性に気付いたと述べました。1977年に日本に戻り、東京大学の安楽泰宏教授の研究室で、酵母の液胞が持つ機能の解明を課題として研究を始めました。その当時は、液胞は細胞のゴミ捨て場に過ぎないという考え方が一般的であり、研究分野としては注目されていませんでしたが、大隅栄誉教授は競争的な研究を避け、人のやらないことをやりたかったと説明しました。自身の研究により、液胞膜におけるアミノ酸・プロトン・イオンなどの輸送が初めて明らかとなり、液胞が分解のみならず生理的な役割も果たしていることが明らかになったと語りました。

すべての細胞に普遍的に存在する微粒子のこと

ユニークな発想でオートファジーの仕組みを発見

オートファジー研究の背景として、オートファジー(細胞が自らの細胞質成分(合成したタンパク質など)を食べて分解することでアミノ酸を得る機能)という現象は1960年代から知られていましたが、分子メカニズムと生理的な意義については技術的な問題から20年間以上未解決のままでした。大隅栄誉教授は1988年からオートファジーの仕組みの解明に向けて研究に取り組み、液胞の分解活性を止めることによって光学顕微鏡でもオートファジーを観察することができました。そうした独創性を発揮しながら、早速、遺伝学的解析を進めた大隅栄誉教授のグループは、短時間でオートファジーに必須なATGの遺伝子のほとんどを同定することができました。大隅栄誉教授は電子顕微鏡の写真を示しながら、オートファジーの形態学的特徴を説明し、発見した時の興奮について述懐しました。

プロジェクターを指しながら

プロジェクターを指しながら

優秀な研究者を集めてオートファジーの分子機構の解明に取り組む

同定したAtgタンパク質の機能はほとんど未知であったため、大隅栄誉教授はしばらくの間は分子機構の解明に戸惑いましたが、優秀な研究者を集めて酵母における実験を行い、それぞれのタンパク質の働きを明らかにすることができたことや、酵母での実験が上手く進むと同時に、哺乳類や植物細胞においてもオートファジーの機構が保存されていることを示すこともできたと語りました。大隅栄誉教授は酵母によって得られた基礎的な解明が、現在、病気の研究に繋がっていることについて伝え、全世界のオートファジー研究者に感謝の言葉を述べました。

現在取り組んでいるオートファジーの研究紹介と、基礎研究の重要性を強調

最後に、大隅栄誉教授が現在東京工業大学にて行っている酵母におけるオートファジーの生理的な研究について説明し、「何がいつ、どうやって分解されるのか」という自身のオートファジー研究の原点となった問いに戻っていることについて説明しました。酵母で未だに解かれていない謎が多いことに言及しながら、基礎研究の重要性について強調しました。そしてこれまで手厚い研究費のサポートを受けてきたことや、共同研究者と家族にお礼の言葉を述べて、聴衆の拍手喝采を浴びながら講演を締めくくりました。

夫婦揃ってステージ上でノーベル財団関係者と記念撮影

夫婦揃ってステージ上でノーベル財団関係者と記念撮影

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016 特設ページヘ別窓

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Email : nobel@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975

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