生命理工学系 News

二階堂研究室 ―研究室紹介 #14―

生物多様性創出の分子メカニズムの解明

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2016.11.21

生命理工学系にはライフサイエンスとテクノロジーに関連した様々な研究室があり、基礎科学と工学分野の研究のみならず、医学や薬学、農学等、幅広い分野で最先端の研究が活発に展開されています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、生物多様性創出のメカニズムの理解を目指す、二階堂研究室です。

准教授 二階堂雅人

生命理工学コース
准教授 二階堂雅人別窓

キーワード 適応進化、比較ゲノム、脊椎動物、平行進化
Webサイト 二階堂研究室別窓

研究紹介

なぜ地球にはこれほどまでにも多様な生物が存在しているのでしょうか?そして、なぜ私たちヒトは猿とつがいをつくったりしないのでしょうか?一見するとあたり前のようにすら感じてしまう、この生物多様性やそれを生み出す種分化のメカニズムを明らかにするのが進化学であり、本研究室のメインテーマでもあります。進化学は多様性の研究ですから扱う動物も多様性に富んでいます。主に高等脊椎動物を扱いながら、以下のようなテーマを進めています。

1. シクリッドの平行進化の分子メカニズム

東アフリカの大地溝帯に位置する三大湖、ビクトリア湖、マラウィ湖、タンガニィカ湖には形態的・生態的に多様なシクリッドが数百種を超えて生息し、「種分化」や「適応進化」の好例として知られています。そして、各湖のシクリッドはそれぞれが湖に固有な種であるにも関わらず、湖間において似た形質をもつ種が数多く存在しており、これは「平行進化」の好例であると言われています。私たちは、どの三大湖においてもかならず出現する「肥大化した唇」に着目し、その肥大化メカニズムを明らかにしたいと考えています。食性適応によって三大湖で独立に起きた「唇の肥大化」に、DNAレベルでの共通メカニズムが存在するのか、しないのか、ここが興味深いところです。

2. シクリッドのフェロモンと種分化の研究

同種の雄と雌が互いに惹きあうために、しばしばフェロモンが用いられます。シクリッドは体色が多様なため視覚による同種認知や種分化の研究が多く進められてきましたが、フェロモンに関してはその存在すら明らかになっていません。私達のグループは、シクリッドの嗅覚について研究を続けおり、特にフェロモンとその受容体がどのように進化し、ひいてはシクリッドにおける種の分化に貢献してきたのかを明らかにしていきたいと考えています。

H. sauvageiの嗅覚器官の解剖図(上)嗅覚器官の拡大図(下)

H. sauvageiの嗅覚器官の解剖図(上)
嗅覚器官の拡大図(下)

嗅上皮におけるV1R遺伝子の発現 Ota, Nikaido et al. (2012)

嗅上皮におけるV1R遺伝子の発現
Ota, Nikaido et al. (2012)

3. 哺乳類の平行進化の分子メカニズム

哺乳類の多様化プロセスの過程では、独立に何度も体毛が硬い棘もしくは針に進化しています(例えばハリネズミ、テンレック、トゲマウス、トゲネズミ、ヤマアラシ、ハリモグラなど)。つまり、「体毛の針化」というのは平行進化の好例ともいえます。特にハリネズミやテンレックにおける針内部の構造は縦横にリブが配置された極めて緻密なつくりで、これがいかなる発生過程を経て作り上げられるのかを明らかにするため研究を続けています。

Adaptive Radiation-Parallel Evolution

4. 脊椎動物に共通のフェロモン受容体の研究

フェロモンやその受容体というのは一般的に種間での多様性が大きく、それが異種間交雑を防ぎひいては種や生物の多様性の維持につながると考えられています。そして、その受容システムは祖先となる魚類が陸上化を達成した時点で大きく刷新されたことも知られています。しかし私たちは、古代魚(ポリプテルスやガー)から哺乳類までほぼ全ての脊椎動物に共通に存在する1コピーのフェロモン受容体候補遺伝子を発見しました。これは、脊椎動物の4億年以上に渡る進化の過程において単一のフェロモン受容体がずっと保持されてきたことを示唆し、極めて興味深いです。私たちはこの新規受容体がフェロモンを受容する神経細胞の根幹に関わる役割をしているのではないかと予想し、その機能を明らかにすべく研究を続けています。

研究成果

代表論文
[1] Suzuki H, Nikaido M, Hagino-Yamagishi K, Okada N (2015) Distinct functions of two olfactory marker protein genes derived from teleost-specific whole genome duplication. BMC Evol. Biol. 15:e245.
[2] Brawand D et al. (Nikaido M, 75人中45番目) (2014) The genomic substrate for adaptive radiation in African cichlid fish. Nature 513:375-381.
[3] Nikaido M, Ota T, Hirata T, Satta Y, Saito Y, Aibara M, Mzighani SI, Hagino-Yamagishi K, Sturmbauer C, Okada N. (2014) Multiple episodic evolution events in V1R receptor genes of East-African cichlids. Genome Biol. Evol. 6:1135-1144.
[4] Nikaido M et al. (27 co-authors) (2013) Coelacanth genomes reveal signatures for evolutionary transition from water to land. Genome Res. 23:1740-1748.
[5] Nikaido M, Suzuki H, Toyoda A, Fujiyama A, Hagino-Yamagishi K, Kocher TD, Carleton KL, Okada N. (2013) Lineage specific expansion of V2R receptor (OlfC) genes in cichlids may contribute to diversification in amino acid detection. Genome Biol. Evol. 5: 711-722.
[6] Nikaido M, Sasaki T, Emerson JJ, Aibara M, Mzighani SI, Budeba YL, Ngatunga BP, Iwata M, Abe Y, Li W-H, Okada N. (2011) Genetically distinct coelacanth population off the northern Tanzanian coast. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 108:18009-18013.
[7] Nikaido M, Piskurek O and Okada N. (2007) Toothed whale monophyly reassessed by SINE insertion analysis: the absence of lineage sorting effects suggests a small population of a common ancestral species. Mol. Phylogenet. Evol. 43:216-224.
[8] Nikaido M, Hamilton H, Makino H, Sasaki T, Takahashi K, Goto M, Kanda N, Pastene LA, and Okada N (2006) Baleen whale phylogeny and a past extensive radiation event revealed by SINE insertion analysis. Mol. Biol. Evol. 23:866-873.
[9] Nikaido M, Cao Y, Harada M, Okada N, Hasegawa M. (2003) Mitochondrial phylogeny of hedgehogs and monophyly of Eulipotyphla. Mol. Phylogenet. Evol. 28:276-284.
[10] Nikaido M, Nishihara H, Fukumoto Y, Okada N. (2003) Ancient SINEs from African Endemic Mammals. Mol. Biol. Evol. 20:522-527.
[11] Nikaido M, Kawai K, Cao Y, Harada M, Tomita S, Okada N, Hasegawa M. (2001) Maximum likelihood analysis of the complete mitochondrial genomes of eutherians and a reevaluation of the phylogeny of bats and insectivores. J. Mol. Evol. 53:508-516.
[12] Nikaido M, Matsuno F, Hamilton H, Brownell Jr. LR, Cao Y, Ding W, Zuoyan Z, Shedlock AM, Fordyce RE, Hasegawa M, Okada N. (2001) Retroposon analysis of major cetacean lineages: the monophyly of toothed whales and the paraphyly of river dolphins. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 98:7384-7389.
[13] Nikaido M, Harada M, Cao Y, Hasegawa M, Okada N. (2000) Monophyletic origin of the order chiroptera and its phylogenetic position among mammalia, as inferred from the complete sequence of the mitochondrial DNA of a Japanese megabat, the Ryukyu flying fox (Pteropus dasymallus). J. Mol. Evol. 51:318-328.
[14] Nikaido M, Rooney AP, Okada N. (1999) Phylogenetic relationships among cetartiodactyls based on insertions of short and long interpersed elements: hippopotamuses are the closest extant relatives of whales. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96:10261-10266.

教員紹介

二階堂雅人 准教授 博士(理学)

2002年 3月 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 博士課程修了(理学)
2000年 4月 - 2002年 3月 日本学術振興会特別研究員(DC1)於 東京工業大学 生命理工学研究科
2002年 4月 - 2003年 3月 日本学術振興会特別研究員(PD)於 東京工業大学 生命理工学研究科
2003年 4月 - 2006年 3月 日本学術振興会特別研究員(PD)於 統計数理研究所 予測制御研究系
2006 - 2007年 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 助手
2007 - 2015年 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 助教
2015年 3月 現職
2003年 2月 井上研究奨励賞
2012年 8月 日本進化学会研究奨励賞
2013年 4月 文部科学大臣表彰若手科学者賞
2015年 8月 竹田国際貢献賞
2015年 12月 東工大挑戦的研究賞
2016年11月 日本動物学会奨励賞
所属学会
日本進化学会、日本遺伝学会、日本分子生物学会

教員からのメッセージ

二階堂准教授より

博物学隆盛の時代に生まれた進化学は科学技術の発達によって今まさに大きな躍進を遂げているところです。つまり、過去の偉大な研究者たちが興味を持ちつつも解決できなかったさまざまな問題を自分の手で解き明かすチャンスが到来したわけです。とくに動物や動物の飼育が好きな学生さんにとっては極めて楽しく有意義な研究生活になると思います。ただ、好きなことで競争するのが研究の世界ですから、それなりの覚悟と努力がいることには間違いありません。まずはピンセットと顕微鏡を準備して動物をじっくり観察し、自分だけのオリジナルな発見を世界に発信しましょう。

お問い合わせ先

准教授 二階堂雅人
大岡山キャンパス 西3号館 612号室
E-mail : mnikaido@bio.titech.ac.jp

※この内容は掲載日時点の情報です。最新の研究内容については研究室サイト別窓をご覧ください。

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